知床を訪ねる カメラ片手の山歩き

知床は日本で三番目の世界自然遺産
2010年7月9〜12日

クリック拡大表示

梅雨空の上は積乱雲


小清水原生花園駅・エゾキスゲ・エゾノヨロイグサ・ハマナス


エゾスカシユリ


クリオネ


●2010年7月9日

中部国際空港→女満別空港→空港レンタカー→小清水原生花園→ウトロ・知床グランドホテル北こぶし(3日連泊滞在)
午後3時半、曇り空の女満別空港に着く。レンタカーの手続を終え、目的地のウトロまで90kmを走る。網走市街を迂回してオホーツク海岸沿いに走ると小清水原生花園が広がっている。しばし道草。

斜里は知床半島の玄関であり、ウトロは知床の核心拠点になる。道路はほとんど片側一車線だが整備状態は良く、快適に走ることができる。制限速度は市街地以外50kmなので、70kmを越えないスピードを維持しつつ、予定通り、明るいうちにホテルに着いた。

屋上にある天空露天温泉で、疲れてもいない身体を癒してから晩餐の席につく。初日はバイキングだが、海山の幸の種類の多さに思わず手が出る。ビールと酒が進む。

一階ロビーの水槽にクリオネが泳いでいる。早速カメラで遊んでみた。1センチに満たないミクロの不思議。

クリオネは巻貝の仲間であるが、成長すると完全に貝殻を失う。体は透明な部分が多く、体の前半に局在する内臓のみが不透明である。胴体の前部に透明な1対の翼足があり、翼足を動かして遊泳する。この姿から天使に例えられ、「流氷の天使」とも呼ばれる。ウィキペディアより。


知床五湖はガイドなし立入禁止
2010年7月10日

クリック拡大表示

知床1湖だけは高架木道で通行可能

周回遊歩道は認定ガイドの引率のみ通行許可

クマやクマゲラなど生物の痕跡

●2010年7月10日

知床自然センター→知床峠→フレペの滝周回→知床五湖の高架木道1湖往復→午後予約で知床五湖実験ツアー参加
天気が悪い。聴くところによれば、ここ二三年、北海道にも梅雨はあるそうで本州並みにぐずつくようだ。知床峠、羅臼湖予定が濃霧と雨には勝てず、引き返してフレペの滝を散策する。

その後、知床五湖に向かった。駐車場入口で「クマが出たので周回できません。1湖のみの高架木道が往復できます」との係員の言葉。仕方なく駐車料を払って、木道を歩くことにした。1湖の展望台に着くとその先の道は施錠進入禁止。未練たらしくその道を目で追ってみた。おかしい。踏み跡がない。今年の下草が踏まれていない。

戻って係員に聴いてみた。「今年は何回、五湖の通行ができたのですか。人の踏み跡が見当たりませんよ」。係員は返事に窮した挙句ガイドハウスで聞いてほしいとのこと。地元財団法人が管理している。危険なクマの出没と自然保護の観点から、別ルートで知床五湖の実験ツアーを開催していると言う。今日もクマが確認されたので、今は中断しているが、午後から再開するという。有料ガイドの案内で。結局のところ、一般観光客が五湖を巡り歩くことはできない。

観光案内はどれも間違っているというより、示し合わせた詐欺行為に近い。クマの危険があるので1湖の木道のみ通行可能と告知すべきだが、観光客の減少が気になるのだろう。しかし、間違っている。意地でも五湖を歩こうと、昼食がてら麓に下りて、ガイドリストをひとつずつ電話してみた。苦労の甲斐あって、午後2時のツアーに潜り込むことができた。ガイド料一人4千円也。極めて高い。

1人のガイドに客10人限定。15分間隔で案内する。1時間4回5時間で20回。10人×20回×4,000円=80万円/1日。シーズン売上高=5ヶ月×30日×80万円=1億2千万円市場。危険なクマの存在を理由にした、規制の枠の中で生まれたニッチな独占市場。

内地で見られるボランティアガイドはいない。ビジネスライクと世界自然遺産を考えると複雑な思いがムクムク。


知床の貴重な野草を食い荒らすエゾシカ
2010年7月10日

クリック拡大表示

フランス菊をパクパク食べるエゾシカ


フレペの滝とオホーツク展望。コウホネ・ナミキソウ

●エゾシカ保護による生物多様性問題 知床から野草が消えていく。野草の宝庫と言われたのは過去の遺物か。フレペの散策路も、知床五湖周回路にも、野草は極めて少ない。ガイドに訊いてみたら、エゾシカの繁殖が原因のひとつであるという。

フランス菊は強いから、パクパク食べられても根っこが強いのでまた生えてくる。外来種は強いが、日本の固有種は弱い。エゾエンゴサクはエゾシカの好物らしく、絶滅の危機に瀕している。

世界遺産に登録され、動物を保護すれば、植物の生態系が崩れる。すべては人間の仕業でありそうだ。


知床は天気が悪いので摩周湖、阿寒湖へ
2010年7月11日

クリック拡大表示


霧の摩周湖


弟子屈の900草原と阿寒湖のペンケトー・パンケトー


裏摩周にある神の子の池とクワガタ

●2010年7月11日

神の子池→裏摩周展望台→弟子屈900草原→阿寒湖→摩周湖展望台→川湯硫黄山
知床は一日中雨予報。知床半島はオホーツク海と太平洋を割って伸びる細長い半島だが、急峻な崖と高山があるために上昇気流ができやすく、霧や雨になりやすい局地気候である。

それなら外へと、摩周湖、阿寒湖方面に繰り出してみた。写真で見ての通りよく晴れ渡っている。しかし、摩周湖だけは異常なほど霧にすっぽり覆われている。往路は裏摩周の神の子池から裏摩周湖展望台に。復路は表玄関から摩周湖展望台へ。いずれも、時間を午前と午後に分けても、麓は晴れていても、ここだけは霧の摩周湖。

摩周湖第一展望台駐車場だけは有料である。「今まで晴れていたのに」と係りのおばちゃん。「410円です」と催促する。麓から見たときは、ずっと山頂付近は雲がかかっていたのに。入るかどうか迷ったが、ついつい。

コーヒータイムも入れて小一時間粘ったが、結局、霧は晴れなかった。
おばちゃんの言と、昨日の「クマが出た」言に、共通点を追っている自分の心の狭さ。北海道はデッカイドウ。


知床と別れ、女満別空港へ
2010年7月12日

クリック拡大表示

オロンコ岩から眺めるウトロ港と知床連山


エゾノヨロイグサ・イブキジャコウソウ・ツリガネニンジン・キバナシャクナゲ


クサフジ・マツヨイグサ・オオカサモチ・?


ジャガイモの花

●2010年7月12日

早朝オロンコ岩→ホテル撤収→藻琴山展望台→屈斜路湖→美幌峠→女満別→中部国際空港
朝5時、ひとり雨のホテルを出て、海岸に突き出たオロンコ岩に登った。ここにはエゾシカがいないから、野草は被害にあっていないでしょう、のガイドの言葉を信じて登ってみた。ウトロともお別れなので、丘の上から見晴らしてみたい。

オロンコ岩の看板案内。「そこに座っている岩」を意味するアイヌ語に由来し、昔、この岩で先住民族が戦ったという逸話が残っている。高さ約60mの岩の上まで登ると、オホーツク海や知床連山を一望することができ、また、ウトロ本来の野生の草花を楽しむこともできる。

叩きつける雨の中を女満別空港へ。時間はたっぷりあるので、屈斜路湖、美幌峠経由で回り込んだが、いずこも視界不良。コーヒータイム、昼食タイム、更にコーヒータイムを繰り返して時間つぶし。

午後4時の離陸が20分遅れたため、自宅には午後8時過ぎに無事帰ることができた。

「知床の野草はエゾシカの餌である」ことは事実のようだ。


カメラ片手の山歩き