スイス・チロルアルプス
マッターホルンに憧れて

22才の頃、本場アルプスの麓で暮らすことを夢に見て、スキー仲間の伊澤君に寮の娯楽室で話を持ちかけた。何とナント、彼も同じ思いを持っていた。「ヨシッ、2年後に決行だ」。当時の給料は2万円ちょっと。ちなみにヨーロッパへの片道の飛行機代が25万円。現在の相場で換算すれば250万円に相当する。並大抵の努力ではカネが貯まらん。とりあえずは最もエコノミーな旅行プランを立てた。
横浜→(船)→ナホトカ→(列車)→ハバロフスク→(飛行機)→モスクワ→(列車)→ウイーン

一週間かけてウイーンまでの旅費は15万円。五ヶ月の現地滞在に15万円。合わせて30万円の資金を作らなければならない。そんなこんなで苦労はしたが、予定通り、ヨーロッパへ飛び立った。最初の一ヶ月だけは旅をして遊ぼうと、ヒッチハイクを重ねてたどり着いたのがツェルマット。憧れのマッターホルンをバックに記念撮影。

マッターホルンに登るための装備もなく、ガイドを雇う金もなかったので、比較的容易なダッハシュタインに登ることにした。ツェルマットからザルツブルクに戻り、サウンドオブミュージックの舞台になったザルツカンマーグートの湖沼群の東南にある山塊を目指した。日本人にはあまり知られていない。湖の畔にある山小屋に泊まり、翌早朝に山頂往復。山小屋の主人が作ってくれたサンドイッチをナップザックに入れて、普段のストリートシューズで出かけた。無理なら引き返せばいいと思いつつ、氷河を渡り、雪渓を登って山頂を極めることができた。

山頂で広げたサンドイッチは、食べることができなかった。特製チーズの独特の臭いは、当時としては腐っているとしか思えなかった。その臭いが、パン全体に染み込んでいるので、結局ひとかけらも食せず、下山した。

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