のんびり山歩き・奥三河岩古谷山
デジカメ山野草トレッキング
岩古谷山
IWAKOYASAN

御殿岩より。手前中央の明るい山が岩古谷山。背景の山並みは左から鹿島山、大鈴山、明神山
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山名 岩古谷山
標高 799m
所在地 愛知県
登山日 2002年11月17日
天気 晴れ
メンバー 7人
コースタイム
09:20 和市登山口
09:55 堤石峠
10:20 岩古谷山/10:55
12:10 小ピーク/12:55
13:35 御殿岩
14:15 びわくぼ峠/14:30
15:20 塩津温泉

杉の木立。 クリックで拡大表示

黒倉集落の彼方に日本ガ塚山が霞む
 縦走路

岩古谷山稜

御殿岩、障子岩岩稜
4台の車が豊川ICに集結したのは7時50分。151号から257号に道を取り清崎の交差点を右に折れて野々瀬川沿いのいかにもすれ違いが心細くなる小道を何とか塩津温泉までたどり着いた。諏訪神社手前の公衆トイレ前に数台の車が停められるスペースがある。ここに2台をデポして残りの2台に分乗し、473号沿いの和市に到着したのが9時をちょっと回っていた。

今日はこの和市から岩古谷山に登り、御殿岩、びわくぼ峠まで縦走して塩津温泉に下る予定である。今日の仲間は合わせて7人。予感が的中。半月ぶりに戻ってきた秋日和。この天気なら、奥三河の秋を存分に味わえる。

軽快な足取りが、整然と直立、整列する杉の植林帯を縫っていく。山道は整備されていて、歩きやすい勾配が続く。通称十三曲がりと言われるツヅラ折れの登りも、苦労することなく堤石峠に導いてくれる。今ではこの下をトンネルが貫通しているが、昔の人は黒倉集落への日常的な往来に使っていたのだろう。徒歩で峠越えを往復すれば、少なくとも半日は費やすが、現在では10分もあれば充分。

あらためて考えると、スピードと叙情は反比例しているようだ。一瞬でトンネルを通過するより、自然を愛でながら道草をするゆとりが、現代人、いや日本人には必要なのかも知れない。悟りきった心地で峠道を右に曲がり、岩古谷山へ向かう。

途端に急峻な安山岩、玄武岩の岩壁がはだかるが、丸太のステップや鉄バシゴに導かれて高度を上げる。久しぶりに風もなく、おだやかな青空には幾つもの雲が湧いている。その雲の合間から射し込む陽ざしに、赤や黄色に染まる岩肌が美しい。前を行く仲間の口から感嘆の声が出る。

狭い岩稜は危険を伴うが、ルートはしっかり整備されていて歩きやすい。登りがなだらかになり、雑木のトンネルをくぐると視界が開けて広場に出る。幾つものベンチが設けられ、先客が楽しそうな語らいの円を描いている。狭い山頂よりはと、我々もベンチに陣取り、休憩をとることにした。上写真クリックで拡大表示

799mの頂は展望に恵まれ、北には鹿島山、大鈴山、平山明神山の山並みが紅葉に燃えている。目を右に移すと、三ツ瀬明神山の大きな山容がシルエットになって印象的だ。その背後に広がるアルプスの山並みは、今日の陽気にかすんでスカイラインに溶けている。

西には田口の集落がまどろみ、南へはこれからたどる鞍掛山への山稜が延びている。長居は禁物とメンバーを急き立て、惜しみながら山頂に別れを告げ、直下から東側に作られた鉄梯子を激下りする。

山稜は変化に富み、最初はどんどん下って行くが、そのうちにアップダウンが繰り返されるようになる。この辺りは山容が急峻なためか人工林がなく、モミ、ツガなどの針葉樹と、ブナ、コナラ、シデ、クリの広葉樹が雑木の森を形作っている。半分以上は葉を落としたかと思える枯葉の絨毯を踏みしめ、明るい自然林に包まれながら進む。樹々の枝からヒラヒラと輝きながら舞い落ちる葉は止めどなく、秋の風情のフィナーレにふさわしい。

12時をまわってたどり着いた小ピークのベンチを昼食の場所とした。にぎやかな岩古谷山頂とは対称的に、縦走路は静かである。まだ誰とも出会っていない。秋と親しむには絶好の日和と場所である。紅葉をバックに記念写真を撮ってから、ゆっくりと腹ごしらえ。持ち上げた諏訪の舞姫をラッパ飲みしながら、赤いキツネと握り飯に、仕上げの生チョコ。食前酒からデザートまでの贅沢なフルコースを味わえる幸福感。やっぱり山はいい。

秋の日は短い。ふたたび歩き始める。相変わらずの起伏を繰り返し、登りごたえに息が切れる頃、御殿岩にたどり着いた。ここが最高点の822m。昔は天神様が祀られていたそうだ。

縦走路から外れて右に登ると絶壁の上に出る。足がすくむ感じだが、石英安山岩の岩塊上に立つと、いまたどってきた山稜が一望できる。「絶景かな」。ここを下って二つほどの起伏を乗り越すと、最後のピーク障子岩に出るが、ルートは絶壁を避けて東側を巻き、びわくぼ峠に導いてくれる。

思いの外、歩き応えのある稜線だった。50mから100mほどの起伏を七つも八つも越え、最後に御殿岩の200m近い高低差。少なからず疲労感を味わっている。

峠にはトイレがある。用を足してから下りにかかる。色とりどりの雑木林が、杉の植林帯になり、どんどん下っていく。道は滑りやすく、急である。ガイドブックは逆コースを紹介していたが、私の選択は間違っていなかった。ここを登りたくはないものだ。膝が痛くなる頃に麓の生活音が聞こえてきた。


「紅葉のシルエット」へ続く

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ふたつの明神山 左/平山明神山970m。右/三ツ瀬明神山1016m
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