風越山・木曽 デジカメ山野草トレッキング
風越山 かざこしやま 木曽 1699m

 
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左/風越山展望台から眺める中央アルプス主稜。右手前が三ノ沢岳、中央に宝剣岳、木曽駒ヶ岳。 右/宝剣岳


木曽の展望

左/19号線大桑から中央アルプスを望む。中/カヤトの原から木曽谷俯瞰。右/カヤト原で初めて中アが見えてくる。

カヤトの原から奥三界山や木曽の山々を望む

自然林の稜線

イタヤカエデの黄葉の登山路・葉を落とした明るい広葉樹林の尾根筋・?同定中。花弁を落としたマツムシソウか?


山名 風越山 木曽
標高 1699m
所在地 長野県上松
登山日 2006年11月3日
天気 快晴
メンバー 夫婦
コースタイム
09:45 木曽古道入口
10:30 風越山林道登山口
11:50 カヤト境
12:45 風越山頂展望台/13:30
15:10 木曽古道入口
コースタイムは夫婦のんびり時間です。





連休中日に所用があるので、この三連休は山歩きをあきらめていたが、いかにも暖かそうな朝日がテラス越しに顔を出した。この好天に家でくすぶるのはもったいない。大川入山へ行くことも考えてはいたが、妻の足では心もとない。紅葉の山歩きなら標高千メートルあたりか。書棚の本に目を通しながら決めた先は木曽の風越山。

国道19号を北上して、上松の寝覚ノ床に入る手前の信号を右に折れて小さな集落を抜け、木曽古道の道標をたどって林道を走らせる。車一台がやっと通れる舗装路が地道になるとビニールハウスのある高台に出る。この先に「これより木曽古道」の道標がある。幅寄せすれば停められるふくらみに駐車して山靴に履き替えた。

木曽古道はスギやヒノキの薄暗い植林帯の中を歩く。熊に注意の立て札が気にかかり、妻は鈴を鳴らし、僕は枯葉を蹴散らしながら足音をたてて歩く。森閑とした山道に夫婦のざわめきだけが響く。人の気配を全く感じさせない樹林帯である。暗い割には下草は元気だ。以前は肥沃な里山だったのだろう。古道はときどき林道を串刺しするように渡り、三度目で風越山登山口に着く。林道脇にワゴンが一台。降りてきた人から声が掛かる。「風越山に登られるのですか?」。そうです、と言うとニコッと笑って「私も同じです」。彼は伊那から来たという。今日の山歩きで出会った唯一の人である。マイナーな山である。

森は一変して明るい雑木林の雰囲気になる。アカマツも多いが、落葉広葉樹も多く、コナラ、クヌギ、ブナ、シラカバ、ホウノキや、アジサイなどの低木も多い。里山の典型的な二次林の中を歩くようになるが、山道はほぼストレートに尾根筋の急勾配をたどっている。直ぐに妻の足取りが鈍くなり、息苦しいと訴えては立ち休み。確かにアキレス腱が伸びきる傾斜である。その上、黒い腐植表土が枯葉と相まって滑りやすい。「先に行って」と言われても、ほかっておけない。ルートがしっかりしていない上に枯葉が被っているので、独りでは迷うこと間違いない。妻の後からゆっくり歩いていく。

次第に黄葉のトンネルが形成されるようになる。イタヤカエデの見事な尾根だ。相変わらず勾配はきつい。妻にとってはやっとの思いでカヤト境に着いた。風越山まで1Km、1時間の案内が書かれている。正午が近い。妻の顔色をうかがうことより、「頑張ろう」の言葉で促す。一面黄金色の背丈に近いカヤトの原を登るようになる。振り返ると、木曽川の蛇行とその上に幾重にも連なる山々が霞んでいる。悠久の自然景観が広がっている。日射しがあっても渡る風は冷たく、汗は出ない。しばらくすると稜線は二分され、右はカヤト、左は天然林になる。行く手の山並みの間に、初めて中央アルプスの稜線が見えてきた。三ノ沢岳の支稜だろう。再び森の中を歩くようになると、見事な天然林の世界が広がる。すでに標高は1500mを越えている。樹齢数百年もあろうサワラの大木やスギの古木。見上げると首が痛くなる。

風越ノ頭を過ぎると傾斜もゆるみ、快適な森の山路になる。相変わらず静かな山歩きが続く。左の梢越しに中央アルプスの稜線が見え始める。写真を撮るほどの空いた空間は見せてくれない。意地の悪い森だ。そうこうしているうちに風越山頂に着いた。三角点と山頂道標はあるが、景色は森に包まれた地味な頂である。これを見る限りではマイナーな山の由縁が理解できる。道標には、展望台まで5分と書かれているので、そこまで足を延ばして昼食場所とすることに決めた。

展望台は、見晴らしの利きそうな場所を探して、地元の人たちが樹林を枝打ち、伐採処理したもので、丁度、木曽駒ヶ岳の稜線から宝剣岳、三ノ沢岳までが見える。まさしく絶景かな、である。登山口で会った一人の先客以外、誰もいない。僕たちの到着を待って、彼は別れを告げて下りて行った。ガスを点けて熱燗とカップうどんで暖を取る。わずかな陽当たりの展望ポイントは、それでも寒い。夫婦ふたりだけのもったいない時間。贅沢な時間を静かに楽しみたかったが、妻の「寒い」の声で撤収。確かに、手はかじかんでいる。


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