李さんは「ご近所ねっと」のスポンサーである。ポータルサイト内に広告ページを掲載している。昨年の１１月に突然、事務所の私を訪ねてきた。「インターネットで営業展開したい」。要するにオリジナルのホームページをアップしたいらしい。
彼は瀬戸郊外にガラス工房を開いている。５年ほど前までは、注文も多く価格も安定していた。しかし、不安定な景気の中で注文が減り、価格も下落、売上は当然のことながら落ち込んできた。だから営業戦略の一端としてネットショップを開いてみたいという。「わずかな予算で何とかならないだろうか」。
彼とは知らない間柄ではないので一肌脱ぐことにした。「少なくとも一年は頑張って下さいよ」。

そんな彼の工房が、今朝の名古屋テレビで生放送されている。朝に弱い彼だから、さぞかし大変だろう。出勤してから電話をしてみた。相変わらずの元気な声だ。当社の制作スタッフからは前もって情報は聴いている。あれから半年しか経っていないのに、ログ解析では優秀な成績のようだ。彼の言葉では、今ではネットからの工房体験申し込みが７割だという。団体さんの秋の予約もすでにたくさん受けているとのこと。成果の早いことに私もビックリでした。

成功へのプロセス
制作に当たって、戦略を絞ったこと。物販よりガラス作り体験に絞ってターゲットを決め、親しみのある分かりやすく、シンプルにアクセスしやすいデザインとした。検索エンジン対策として、タイトルにガラス・工房・体験・瀬戸を埋め込み、トップページのテキストに埋め込むキーワードを決めた。トップページでサイトのアウトラインが理解できるように、ダイジェスト版スタイルとし、リンクで詳細ページへ飛ばし、階層は浅くフラットなサイトマップを心掛けた。
気軽にガラスづくりを体験してもらうために、フレンドリーな雰囲気を出すことにした。お子さんにも楽しめる家族連れ、友だち同士の週末の値打ちなプラン、団体さんにも対応できる指導体制など、ユーザー心理もうまく誘導できている。Yahoo, Googleなど、検索エンジンにも登録済みで、「ガラス＋体験」なら、いずれもトップページにランクされている。
運営は自社努力
運営まで制作プロダクションに業務委託すると、必ず失敗します。直接の売買は営業の仕事であり、その機微を外部の制作技術者に分かるはずがありませんね。マーチャンダイザーや店員の代役を、デザイナーに頼むようなものです。このことは李さんに前もって念を押し、毎日更新を約束させました。彼も熱心にネットタイムを作って対処しましたが、スタッフの一人が精通していたことも成果の要因でしょう。
対話とリンク
体験作品と作者紹介を掲示板にアップして、お客さんとの対話を継続させ、口コミリピーターを狙う。ご近所ねっとの地域ポータルや多サイトからの相互リンクを貼り、露出度をアップする。

オンラインショップの成功は運営サイドのスキルにかかっています。運営主体と私たちとのパートナーシップが成果を出します。李さんの次の夢は、彼の工房で働くスタッフのブランディングに努め、物販をウエブ上で展開、成功させることです。最初は小さく、市場の反応を分析しながら、徐々に大きく育てていきましょう。
始めに情報戦略構想ありき。