Q 質問  A 回答
「初めての経営計画」は、本当に決算書が分からなくても作れますか? 起業する人や後継者の人たちは、決算書の中でも貸借対照表は見慣れていません。ただし、売上や利益まで分からない人はいないはずです。損益計算書で、売上(収入)から費用(支出)を引いた利益(営業利益)ぐらいは分からないと、経営など考えられません。これさえ分かっていれば、戦略が作れます。この考え方で、始めての人でも、例題を読みながら経営指針を作ることができるようにしました。

経営指針と経営計画は何が違うのでしょう?

経営計画は経営指針に含まれます。経営指針は経営理念、経営方針、経営計画の三部作で成り立ちます。21世紀は変化の時代なので、私は長期計画は推奨しません。3〜5年の中期ビジョンを立てて変化対応できる3ヶ年利益計画と単年度経営計画を立てるよう指導しています。従って、経営計画は毎年立てて目標を定めます。

経営計画はほとんどの企業が立てているのでしょうか?

企業は全国に約470万社あります。ほとんどは小規模企業であり、全体では2割ぐらいしか経営計画を立てていません。ただし、毎年分析して更新している企業は極くわずかのようです。かと言って安心することは危険です。反対の見方をすれば、計画を立てて行動すれば、着実に8割から抜け出して、上位の成果が出るということです。

経営指針を立てたいと思いますが、手つかずで何年も経っている状態です。どうすれば短期間で立てることができますか?

手つかずで放置することが最も危険です。経営が悪化している状況だとしたら、どちらを優先しますか。悪化の経営を続けるか、それとも改善させる計画を立てるか。
経営指針(経営計画)を立てることは、それほど難しいものではありません。一人で立てるだけなら一週間もあれば完成します。私の元に相談に訪れる人には言い切ります。「まずはカンタンに立てて下さい」。ローマは一日にして成らず。経営指針も最低3年は必要です。PDCAが機能して、社員が目標意識を持ち、成果が出るまでには時間がかかります。
1年目 まずは経営指針をカンタンに立てる。
2年目 社員を巻き込んで変革のための革新計画を練り上げる。
3年目 活動方針を明確にして、PDCAで目標管理を標準化する。
仲間経営者とグループを作り、勉強会形式で作ると早期に完成できます。
戦略とは何ですか

何をもとにして経営計画を立てるのでしょう? 中期ビジョンに夢を託して、高い売上目標や体質改善を願うのは経営者の常です。しかし、その目標は決してやさしいものではありません。それを手に入れるためのアイデア出しが戦略です。自社の強み、弱みを洗い出して守備範囲を明確にし、どうすればライバルに勝てるかを考えて下さい。最も取り入れられる手法が差別化戦略です。ほとんどの中小企業の戦略ポジションはフォロアーの位置づけです。ランチェスターの法則からすれば、弱者の戦略に当たります。すべてにおいて一気に強者になることはできません。市場を細分化して、自社に有利な市場を見つけ出し、ニッチャー戦略、差別化戦略で、ライバルが乗り込む前に市場を占拠することが秘訣です。それを見つけて戦略を練り、計画的行動に移すことです。

PDCAとは何ですか?

P=Plan 計画, D=Do 実施, C=Check 監視, A=Action 改善行動
上記の四つで循環する経営改善活動のサイクルを表しています。事業活動の循環、ルーティンを習慣化することにより、スパイラル的に経営環境が改善され、企業の永続的な発展につながっていく。グループで、部門で、経営企画室で、それぞれ上位へ向かって管理組織が集束されるので、次年度の計画、中期のビジョンなどが見渡しやすくなります。

行政の中小企業相談を訪ねたら、経営計画を立てなさいと言われました。何で経営計画が必要なんでしょう?

日本の中小企業には戦略がないと言われます。確かにその通りです。分かりやすく説明すれば、戦略=計画です。現代は情報化時代です。刻々と変化する情勢に対応できる計画がなくては、経営は行き詰まります。ノルマだけ与えられても、何をすればいいか路頭に迷う営業社員の姿を想像して下さい。計画、戦略がなくては、行動に移すことができない時代になりました。戦略=計画は、経営=行動と一対で成果を生みます。社員を動かす行動は、計画がなければ成り立ちません。だから経営計画が必須なのです。

経営指針を作れば、本当に会社は強くなれますか?

逆にたずねます。理念も方針も計画もない会社で、社員は何を目標に仕事に励むのでしょうか。計画不在に疑問を持たない社員がいるとするなら、社員はすべて指示待ち能力人材なのでしょう。社長の仕事で最も大切なことは、自分が先陣に立ってトップセールスになることではありません。いかに自分の分身を育てるかです。右腕になる社員、後継者を育成することが将来の発展を約束します。学生が就職のためにインターネットを使って企業研究をしていますが、経営指針の有無は第一条件になるはずです。

うちの社員は何も考えてくれません。そんな社員と経営計画が立てられるとは思いませんが、どうしたらいいでしょう?

考えさせる環境が整備されてないからでしょう。最も信頼できる社員を責任者に任命して、あなたと一緒に計画を立てて下さい。社員とのパイプ役に責任者を立てて下さい。直接社長に言えない意見が、責任者を通じて聞けるはずです。中小企業はワンマン社長で成り立っているケースがほとんどですが、落とし穴は後継者が育たないことです。後継者や中間管理者の育成は、会社全体の人材育成につながります。

最近、"5S"の見直しを説く記事が多く見られます。1ページの経営指針でも、経営資源に取り上げていますが、具体的にはどんな効果が期待できますか?

5S=整理・整とん・清潔・清掃・しつけ。
最後の「しつけ」を「習慣化」に置き換える書も存在しますが、私は社会人としての常識を身に着けてもらいたいので「しつけ」を重視しています。「習慣化」は当然ながらPDCAさせることで、後のルーティンに含まれることです。
反面教師として私の会社を例にとってお話しします。
「Aさん、あなたの顧客、B会社の昨年同時期の広告を見せて下さい。」
Aさんは資料棚のクリアファイルをあっちこっち捜してから15分後に報告。
「すみません。印刷会社から取り寄せます。」
資料が整理されている社員なら1分以内に報告できるはずです。Aさんは、その後の処置を含めると30分の時間をロスすることでしょう。
社員の工賃はいくらに設定しますか?
給料30万円の社員なら、3倍の90万円の粗利設定にします。月当たり20日出勤で8時間労働とすれば160時間労働。1時間当たり5625円で彼は2813円の損失を出したことになります。
5Sの見直しは、ミス、ロスの低減で固定費の低減、生産性の向上に効果があります。

1ページの経営指針シリーズは、どれも2:8の法則を重視し、せっかく社員から提案されたいいプランも切り捨てなければなりません。なぜ多くの課題を一緒に解決してはいけないのでしょうか?

二兎追うものは・・・の例えです。欲張って多くの課題を一年で解決しようとすると、何の結果も得られず、次年度に繰り越される例が余りにも多い。たくさん出された課題から最重要課題を選択するプロセスに間違いがなければ、5割以上が解決できると信じて下さい。一年を待たず解決できたら、期中に次の課題に取り組めばいいことです。この問題解決だけは「ところ天」方式がベストです。
「重要なものはわずかしかない」。最も大切なことを解決すれば、会社や組織は8割方改善されると言うことです。逆に言えば、完璧とか、100%を望むと、膨大なエネルギーを必要とする警告にもなります。経営指針は、合理的にスピーディに進めます。お分かり頂けましたか・・・。

2:8の法則 解説

2:8の法則 パレートの法則
パレートの法則は、2:8の法則とも言われ、イタリアの経済学者パレートの「大勢は少数の要因によって決定される」という経験則です。例えば「売上の80%は、全顧客の20%による」。「全商品の20%が、80%の売上を占める」。100匹の蜂がいるとすると、働き蜂は80匹で、あとの20匹は働いていない。会社組織の中にも、ありそうなことですね。

最近の経済誌では企業の経営指標に付加価値額が載っています。粗利額と何が違うのですか?

粗利額は売上高から変動費(外注仕入等)を引いたもので、売上総利益とも言います。これは業種によってかなり変動するため、同業種比較、自社昨対比較には有効ですが、業界全体指標としては意味を成しません。
付加価値額は、営業利益+減価償却費+人件費で表します。この方が現実的に企業の経営レベルが評価できます。営業利益は直接的に業務に関わる実質利益であり、減価償却は健全な設備投資を償却している数字であり、更に人件費は人材の待遇を表しています。相対評価としては、粗利額より付加価値額の方が、経営指標には正しい判断ができると思います。経営革新支援法でも、利益計画では付加価値額を算出させています。全従業員で割った一人当たり年間付加価値額が指標として生かされます。
ただし、これも企業規模と福利厚生の導入度で人件費に正確性を欠くことが多いので、小規模企業ではアテにならないこともあります。